プロローグ

 僕は平和に興味がない。
どちらかというと平和になんてならない方が良いと思っている。
 
 僕は人に興味がある。
3年前、僕が故郷を飛び出したのは、
人を もっと知りたかったから。
他の国なら、 たくさんの人と出会い、何かを得られると思った。

だが、現実は違った。

想い描いた人の姿がどこにも無かった。
どこへ行っても皆が他人行儀な薄っぺらな嘘で
全身を覆い隠していた。

 2年前、気づいたら僕は、戦場にいた。
通りがかったのか、道に迷ったのか分からないが、
小さな村同士の争いだった。

 そこで、僕は本当の人を知ることが出来た。

戦場で刃を交える人々は嘘も偽りもなかった。
そこにあったのは、憎しみと殺意と不安と
恐怖と悲しみだけだった。
これが「心」をむき出しにした「人」 本当の「人」だ。
日常では見ることのない、
戦場での人の 本当の姿だった。

 でも、これだけが人の本当の姿だとは 思えなかった。
国によって伝統や、しきたりが違うように、
人も戦場も思っていることも、
国によって 違うかもしれない。

そこからだった・・・
僕が戦場を転々とし、 旅をし始めたのは・・・
今までのは、旅ではない序盤だったのだ。
以前までの僕にとって人の真実は・・・

-人は愚か
-人は醜い
-人は嘘つき
-人は欲深い


 これが以前の僕の導きだした人の成り立ち、原型、そして真実。
でも、この世には稀に、この真実をねじ伏せてしまう「人」
が居るかもしれない。
そんな「人」を探して僕は旅にでている・・・のだと思う。
 もし、そんな人が居るのならば、僕は、この真実に
もう一つ項目を付け足したい。

-人は愚か
-人は醜い
-人は嘘付き
-人は欲深い

-されど人は美しい


 僕のことを「奇人・変人」とか、
「気味が悪い」
「なぜ、そんなことが思い つくんだ?」
と、聞かれたら、迷わずこう答えるだろう。



「なぜなら、人が大好きだから・・・。」





プロローグ


 ここは、あなたの居る世界ではない。
あなたの世界には何の関係もない。
ただ、あなたの世界が、この世界に何らかの
影響を与えることがある。
でも、あなたの世界には何の影響はない。

これはあなたの知らない、知らなくてもよい別の世界のお話。

ようこそ、現実と空想の境界線へ・・・

 長い一直線の道がある。
砂利道でもなく畦道でもない。
至る所で草が伸び放題になっている。
少なくとも整備はされていない、いい加減な道である。
ただ、時折、心地の良い風が吹く、草も楽しそうに風に
揺られている。
 そこを、トボトボと一人の男が歩いている
他に誰もいない。
男は、16~18歳ぐらいで、大きな目に凛とした顔立ちをしていた。髪は肩に掛かるくらいで、痩せ型。
この歳にしては背がやや小さい。
服もズボンも長袖で、上着にはやや茶色いダウディコート
を羽織っていた。
服やズボンにたくさんのポーチがついて、
腰にはベルトのような物を巻いていた。
胸ポケットには、あなたの世界で言う、 携帯音楽機が入っている。 首には、ヘッドホンが掛かっているが、音楽機にはコード
が繋がっていない。
ワイヤレスか?

「ねぇ」
 
 男の方から10歳ぐらいの男の子の声が聞こえてきた。
だが、男の周りには誰もいない。

「ん?起きたのかい?」
 
 男が自分の胸ポケットに向かって
聞き返す。まさかとは思うが先ほどの声は・・・。
「ついさっきね」

「シュヴァイツはいいなぁ、歩かなくて
 すむからさ!昼寝も出来るし・・・」

 どうやらシュヴァイツと呼ばれる声の
主は、胸ポケットの音楽機らしい。

「おっ!ここには人が一人も居ないね!
 ふ~もうちょっと起きてられそう・・・」

皮肉った言い方をする音楽機だ。
それに、よほど人が嫌いとみえる。

「人の話聞いてた?シュヴァイツ~それにしても、
 相変わらず人が嫌いなんだね」

「アヴーの方がどうかしてるよ!
 人が大好きなんて信じられないよ!?
 大体、こんな姿になったのは人のせいなんだよ!?
 嫌われずにはいられないよ!」

 シュヴァイツによると、男の名前は アヴーと言い、
人が大好きらしい。
 それに対し、シュヴァイツは、
人のせいで 音楽機になってしまったらしく、
人は大嫌いだと言っている。
これだけの情報では二人は変人にしか見えないが・・・。

「じゃあ、僕も人だ。1年間一緒にいた僕も嫌いかい??」

「えっ?あ、えーと・・・ アヴーは、その・・なんだ、
 あれだよ・・ そう!特別なんだ、特別」

 シュヴァイツがしゃべっているとき、
強いか風が唸りを上げて横切った。

「え?シュヴァイツ、もう一回言って」
 
 聞こえてなかったらしい。

「もう、いいです」

「言ってよ~」

「いいって・・・」

「教えてよ~」

「Don't speak!!(しゃべんな!!)」

「Could you tell me!!(教えて!!)」

「しつこいなー、あんまりしつこいと、幸せが逃げちゃうよ」

アヴーは今のシュヴァイツの言葉を理解できなかったらしい。
「幸せが逃げる?しつこいと?」

「うん、僕の曲リストに「失恋 さよなら幸せ」
 って言う曲が入っているよ。」

「これ、「しつこい」じゃなくて「しつれん」だよ・・・
 てか、何時こんな曲入れたんだい?」

「え?・・・う、うるさいなぁ~凡ミスだよ!!!
 元から入ってたよ!!」

 アヴーは困った表情で笑い顔をつくった。
この凡ミスは今に始まったことではない
らしい・・・。
 
 渋々、シュヴァイツが、

「でも、幸せが本当に逃げちゃうかもよ?」
 
 と、冗談混じりで言った。
アヴーはしばらく考えてこう返した。

「幸せは・・自分が造るんだよ。何回逃げられても、人は幸せを造ることが出来るんだ」

「なにそれ!?」

「自分を幸せにするのは自分自身、 他の誰でもないよ。
 もし、自分自身で幸せ を手に入れられなかった人は、
 多くの犠牲を払って手に入れたんだと思う。」
 
 遠くを見つめるようにアヴーは言った。
シュヴァイツは訳が分からない、といった表情を作った。

「わかんないや、幸せなんて・・・」

「ははっ、そのうち分かるよ、シュヴァイツにも、まっ!          
 正直自分にもわかんないし」

「なんだそりゃ」

 二人は見合って笑った。
しばらく間があり、二人の笑いは自然 に治まった。

「でもね、人は造る以外にも壊すことが出来る。
 自分の幸せと他人の幸せを・・・ そう、他人の幸せを・・・」

 アヴーは、ぼそっと独り言のように言った
それを聞こえたのか、聞こえなかったのか 、
シュヴァイツは、ただ黙っていた。
 
 道が赤く染まってきた。
まだ東の空はコバルトブルーになっているが
西はもう優しい赤色に包まれていた。
それを確認したアヴーは大きく深呼吸して、

「さて、早い内に次の宿にでも行くかな、
 日も沈みかけたし・・・」

「充電もしたいしね」
 
 気がつくと、遠くに町が見えてきた。
あんなに長かった一本道がもうすぐ終わりを遂げる。
足場もだいぶ、整備されてきた。

「さて、どんな町かな?」
 
 一人の男の陰がが段々小さくなっていく。
もう一人の陰を重ねて・・・。
 


































































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